2024年末から2025年初頭にかけて観測された大規模なDDoS(分散型サービス拒否)攻撃は、IoT(Internet of Things)デバイスを利用したサイバー攻撃の脅威を再び永続しました。この攻撃の背後には、IoTデバイスを悪用して構築されたボットネットが存在します。

本記事では、攻撃の詳細と、それに対する可能な取り組みをわかりやすく解説します。

DDoS攻撃とIoTボットネットの概要

DDoS攻撃とは?

DDoS攻撃は、複数のデバイスを使って標的に一斉にアクセスを集中させ、ネットワークやサーバーのリソースを圧迫して機能停止に追い込む攻撃手法です。

IoTデバイスの悪用

IoTデバイスは、家庭用ルータやネットワークカメラといった設備を含みます。これらのデバイスが攻撃者によって乗っ取られ、ボットネット(感染デバイスのネットワーク)の一部として利用されます。

このボットネットを通じて、大量の攻撃トラフィックが生成され、DDoS攻撃が実行されます。

攻撃の仕組み

トレンドマイクロ社の調査によれば、今回の攻撃は次のような流れで行われました。

  1. マルウェアによるデバイスの感染
    • 攻撃者はデバイスの初期パスワードや脆弱性を悪用して侵入。
    • 感染デバイスにマルウェアを送り込み、ボットネットに組み込む。
  2. C&Cサーバを通じた指示の送信
    • 攻撃者は「C&Cサーバ〜コマンドとコントロールサーバ〜」を通じて、攻撃対象や手法を指示。
    • 感染デバイスが受け取った命令に従い、一斉にDDoS攻撃を実行。
  3. DDoS攻撃の実行
    • TCP SYN FloodやUDP Floodなど、複数の攻撃手法が使われました。
    • 攻撃対象には企業のウェブサービスやネットワークインフラなどが含まれ、サーバーダウンやネットワーク障害が発生。

IoTマルウェアの分析

IoTデバイスを標的とするマルウェアの脅威に対応するため、次のような取り組みが必要とされています。

  • マルウェアの感染経路や動作の詳細な解析。
  • IoTデバイスの脆弱性調査と対策の提案。

C&Cサーバの観測

ボットネットの指令を出すC&Cサーバを継続的に監視することで、攻撃の全体像を把握しています。

  • 攻撃コマンドの収集と分析
    C&Cサーバが送信する命令を分析し、どのようなDDoS攻撃が行われているかを特定。
  • 攻撃の傾向分析
    攻撃対象のIPアドレスや地域、業種などを調査し、サイバー攻撃のトレンドを把握。

攻撃手法の解析

観測されたマルウェアのコマンドから、攻撃に利用される手法を明らかにしました。

  • TCP SYN Flood
    接続要求を大量に送り、サーバーを応答不能にする攻撃。
  • UDP Flood
    意味のないデータを大量に送信し、ネットワーク帯域を圧迫する攻撃。
  • 複合攻撃
    上記の攻撃手法を組み合わせ、防御を難しくする。

ボットネットの傾向と被害状況

感染デバイスの特徴

トレンドマイクロ社の観測結果では、ボットネットを構成する348台のデバイスが特定されました。
この観測は、IoTデバイスの通信パターンや異常なトラフィックを継続的に分析することで得られたものです。これにより、デバイスがどのように感染し、ボットネットの一部として機能しているのかが明らかになりました。その内訳は次の通りです。

  • デバイスの種類
    • ワイヤレスルータ(80%)
    • ネットワークカメラ(15%)
    • その他(5%)
  • ベンダー別内訳
    • TP-Link(52%)
    • Zyxel(20%)
    • Hikvision(12%)
    • その他(16%)

感染地域

ボットネットに感染したデバイスの所在地は以下の通りです。

  • インド(57%)
  • 南アフリカ(17%)
  • その他(26%)

これらのデバイスの多くは家庭用やSOHO(Small Office/Home Office)向けのルータやカメラで、セキュリティ設定が不十分なまま使用されていました。

被害拡大を防ぐための対策

個人と企業が取るべき基本的な対策

  1. 初期パスワードの変更
    デバイス購入後すぐに、デフォルトのパスワードを推測しにくいものに変更します。
  2. 定期的なアップデート
    メーカーが提供する最新のファームウェアやソフトウェアを適用します。
  3. 不要な機能の無効化
    使用しないリモートアクセスやポート転送機能を無効にします。

ネットワークセキュリティの強化

  1. ネットワーク分離
    IoTデバイス専用のネットワークを設け、他のシステムへの影響を防ぎます。
  2. モニタリングと異常検知
    トラフィックをリアルタイムで監視し、不審な挙動を早期に発見します。
  3. DDoS防御サービスの利用
    トラフィックの分散やフィルタリングを行うクラウドサービスを活用します。

業界全体の取り組み

  • 情報共有と標準化:企業間でセキュリティ情報を共有し、統一基準を設ける。
  • 法規制の強化:IoTデバイスの安全性を高める法律の整備。

まとめ

IoTデバイスの普及が進む中、セキュリティの甘さを突いた攻撃が増加しています。

被害を防ぐためには、デバイスの設定や管理を見直すことが重要です。
個人も企業も、今すぐできる対策を講じ、サイバー攻撃への備えを強化しましょう。

一次情報,関連リンク
https://www.trendmicro.com/ja_jp/research/24/l/iot-botnet-activity-ddos-attacks.html