2024年上半期におけるランサムウェア攻撃は、依然として企業にとって大きな脅威となっています。特にセキュリティベンダーのパロアルトネットワークスが発表した調査レポートによると、ランサムウェア攻撃者による情報漏えいが増加し続けており、被害の深刻さが浮き彫りにされています。このコラムでは、2024年上半期におけるランサムウェアの被害状況、攻撃者の手口、そして企業に求められるセキュリティ対策について詳しく解説します。

2024年上半期のランサムウェア攻撃状況

ランサムウェア攻撃の被害拡大

パロアルトネットワークスの調査部門である「Unit 42」によると、2024年上半期にはランサムウェア攻撃者が盗み出した情報がダークウェブ上で公開された件数が前年比で4.3%増加しました。これは、ランサムウェアの脅威が依然として高まり続けていることを示しています。特に、1,762件の新たな侵害報告が確認されており、これは1週間あたり約68件の企業が被害を受けている計算になります。この増加傾向は、ランサムウェア攻撃がますます巧妙化し、広範囲にわたっていることを示唆しています。

業界別に見るランサムウェアの影響

製造業が最も被害を受けたセクターに

ランサムウェアの標的として最も影響を受けた業界は製造業であり、全体の16.4%を占めています。製造業は、生産ラインの中断が甚大な経済的損失をもたらすため、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなっています。製造業の脆弱性を狙った攻撃は、企業の生産性に直結するため、業界全体に多大な影響を与える結果となっています。

ヘルスケア業界と建設業の脅威

製造業に次いで、ヘルスケア業界が9.6%、建設業が9.4%と多くの被害を受けています。ヘルスケア業界は患者の命に直結するサービスを提供しているため、攻撃の影響が非常に深刻であり、特に医療機関の業務停止が患者の安全に直結するリスクを高めています。建設業もまた、プロジェクトの進行に影響を与える攻撃が増加しており、業界全体での警戒が必要です。

地域別のランサムウェア被害の分析

アメリカが主要ターゲットに

地域別の分析によると、アメリカ国内の組織が圧倒的多数の攻撃を受けており、917件の侵害が報告されています。これは全体の52%に相当し、アメリカがランサムウェア攻撃の主要なターゲットであることが明らかになっています。アメリカの企業や政府機関が狙われる背景には、同国が世界経済における中心的な役割を担っていることが一因と考えられます。

欧州での攻撃増加

また、カナダ、イギリス、ドイツ、イタリアなどの国々もランサムウェアの影響を強く受けており、特に欧州地域での攻撃が増加傾向にあります。欧州では特に製造業やヘルスケア業界が狙われており、これらの国々では一層のセキュリティ強化が求められています。

ランサムウェア攻撃者の手口と戦術

新たな脆弱性を狙った攻撃の増加

ランサムウェア攻撃者は、新たに発見された脆弱性を利用してネットワークに侵入し、権限を昇格させることで被害を拡大しています。攻撃者は、脆弱性を狙った攻撃を継続的に行い、組織内のシステムに侵入してデータを暗号化するなどの手口を用いています。特に、ゼロデイ脆弱性の利用が顕著であり、攻撃者はこれを活用して迅速に攻撃を仕掛けています。

法執行機関の取り締まりとその影響

法執行機関は、ランサムウェアグループに対する取り締まりを強化しており、2024年上半期にも複数の著名なグループが摘発されました。しかし、これらの取り締まりが攻撃を完全に防ぐことはできず、新たな攻撃者が次々と台頭しています。このような状況では、企業が自らの防御力を高め、迅速な対応が求められる状況が続いています。

企業に求められるセキュリティ対策

脆弱性管理プログラムの強化

ランサムウェアの脅威に対抗するため、企業は脆弱性管理プログラムを強化することが不可欠です。特に、最新の脆弱性に対する迅速なパッチ適用や、セキュリティアドバイザリの活用が求められます。また、定期的なネットワーク監視を行い、異常なアクセスや動作を早期に検知する体制を整えることが重要です。

EDR、SentinelOneの活用

ランサムウェアの脅威に対抗するためには、EDR(Endpoint Detection and Response)、特にSentinelOneのような先進的なエンドポイントセキュリティソリューションの活用が非常に有効です。これらのツールは、エンドポイントでの脅威をリアルタイムで検知し、迅速に対応することが可能です。

SentinelOneの最大の魅力は、AIと機械学習を活用した高度な脅威検知能力です。この技術により、既知の脅威だけでなく、未知のマルウェアやランサムウェアも正確に識別し、攻撃が発生する前に未然に防ぐことができます。また、脅威を検出した際には、即座に自動対応が可能であり、感染したシステムを迅速に隔離し、被害を最小限に抑えることができます。

SentinelOneの導入により、企業は最新のサイバー脅威に対する強力な防御力を得ることができ、ランサムウェアをはじめとする様々な攻撃に対しても、堅牢なセキュリティ体制を築くことが可能です。

従業員教育と意識向上の重要性

ランサムウェア攻撃の多くは、フィッシングメールやソーシャルエンジニアリングを通じて行われるため、従業員のセキュリティ意識を高めることが非常に重要です。定期的なセキュリティトレーニングを実施し、疑わしいメールやリンクに対する警戒心を持たせることで、攻撃のリスクを大幅に減らすことができます。また、従業員が攻撃を受けた際の迅速な報告体制を整えることも重要です。

まとめ

2024年上半期におけるランサムウェア攻撃は、前年を上回るペースで拡大しており、特に製造業とヘルスケア業界が大きな被害を受けています。アメリカをはじめとする主要国がターゲットとされており、脆弱性を狙った攻撃が増加しています。

今後もランサムウェアの脅威が続くことが予測される中、企業はセキュリティ対策を強化し、迅速な対応が求められています。従業員教育の徹底と、最新のセキュリティソリューションの導入が、企業の防御力を高める鍵となるでしょう。

参考:https://unit42.paloaltonetworks.jp/unit-42-ransomware-leak-site-data-analysis/