近年、アメリカにおけるサイバー攻撃は増加の一途をたどっています。2024年の第1四半期だけでも、1日に約220万件のサイバー攻撃が検知されており、特にWebアプリケーションを狙った攻撃が目立っています。攻撃の主な手法としては、SQLインジェクションや脆弱性スキャンが多く、これらはシステムの脆弱性を突いてデータを盗むことを目的としています。
サイバー犯罪による被害額も急増しており、2024年には全世界で約9兆5,000億ドルに達すると予測されています。この金額は、アメリカと中国に次ぐ世界第3位の経済規模に相当すると言われています。特に、データの損傷や金銭の盗難、生産性の損失などが大きな問題となっており、企業や個人にとって深刻な影響を及ぼしています。
主要なサイバー攻撃の種類
アメリカで頻発しているサイバー攻撃の種類は多岐にわたります。以下はその一部です。
- ランサムウェア攻撃
システムをロックし、解除のために身代金を要求する手法。2021年には、テキサス州とニューヨーク州を結ぶ燃料パイプラインがランサムウェア攻撃を受け、一時的に運営が停止しました 。
- フィッシング攻撃
偽のメールやウェブサイトを使って個人情報を盗む手法。特にソーシャルエンジニアリング技術を駆使した高度な手法が増えています 。
政府の対応
アメリカ政府は、サイバー攻撃に対する対策を強化しています。バイデン政権は2024年に国家サイバーセキュリティー戦略を公表し、以下の5つの柱を中心に対策を進めています。
- 重要インフラの防衛
重要な分野に最低限のサイバーセキュリティ基準を設け、官民協力を強化。 - 脅威ある行動者への対抗
国家権力を駆使してランサムウェアの脅威に包括的に対処。 - 市場形成の促進
個人データのプライバシーと安全保障を強化し、安全な開発慣行を促進。 - 強靭な未来への投資
次世代技術のためのサイバーセキュリティ研究開発を優先。 - 国際パートナーシップの構築
デジタルエコシステムへの脅威に対抗するための国際連携を強化。
さらに、バイデン大統領は国内の重要インフラをサイバー攻撃から守るための覚書に署名し、国土安全保障省が主導する安全対策を強化しています。
民間企業の取り組み
民間企業もサイバーセキュリティ対策を強化しています。特に、サイバー保険の導入が進んでおり、インシデント対応計画(IR計画)の義務化が予測されています。これにより、企業はセキュリティ侵害が発生した場合の具体的な対応手順を文書化し、実際にテストすることが求められます。
また、最新のセキュリティ技術を導入し、攻撃の可能性や影響を分析する高度なインテリジェンスを活用する企業も増えています。これにより、潜在的な脅威を早期に検出し、迅速に対応することが可能となります。
国際協力の強化
アメリカは国際的なサイバーセキュリティ協力も強化しています。2024年にはNATOの首脳会議で、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどのインド太平洋地域のパートナー国と協力し、サイバー攻撃への対処や偽情報対策、新興技術への対応を進めることが合意される見込みです。
このような国際協力は、サイバー攻撃に対する防御力を高めるために不可欠です。
まとめ
アメリカにおけるサイバー攻撃は増加しており、その被害は甚大です。政府や民間企業は、サイバーセキュリティ対策を強化し、国際協力を進めることで、この脅威に立ち向かっています。
今後も技術の進化に伴い、新たな脅威が出現することが予想されるため、継続的な対策と協力が求められます。