近年、企業における情報流出事件が後を絶ちません。その中でも、従業員による内部不正、特にデータの不正持ち出しが大きな課題として浮上しています。本記事では、内部不正による情報漏えいのリスクと、その防止における「暗号化」の重要性について考察します。
昨今のサイバー攻撃と言えばランサムウェア攻撃が代表的ですが、ランサムウェアアクターは個人情報や設計情報、営業情報といった秘密情報を窃取し、その情報を公表しないことを条件に身代金を要求します。
情報漏洩を防止するには、まずは外部からのサイバー攻撃を検知し防御することが重要ですが、情報漏洩を引き起こすのは外部の攻撃者だけではありません。
権限を持った組織内のユーザーであれば、サイバー攻撃対策ソリューションがあったとしても、秘密情報に容易にアクセスし漏洩させることができます。
本セミナーの第一部では、EDRとSOCを使った外部からのサイバー攻撃の検知・防御手法につきご説明いたします。
本手法はEDRのログにより内部不正活動を記録し、場合によっては防止することも可能です。そして、これに加えて更なるセキュリティ対策としてご提案するのが、第二部でご紹介するファイル暗号化・IRMソリューションです。
IRMで秘密ファイルを暗号化すれば、権限を持ったユーザーが認証を経たときのみ復号化されますので、万一のファイル漏洩時にも情報自体は公開されません。
アジェンダ
- ご挨拶
- アクト 横井より EDR + SOCについて
- 株式会社データクレシス 津村様より 暗号化について
- 開催形式
オンライン/録画配信 - 登壇者
株式会社データクレシス
マーケティング本部
津村 遼
株式会社アクト
サイバーセキュリティサービス事業部
事業部長 ビジネスプロデューサー
横井 宏治
情報漏えいの現状と内部不正の脅威
企業のデジタル化が進む中で、重要な顧客情報や取引情報はほぼすべてが電子化されています。これにより利便性が向上しましたが、同時に情報漏えいのリスクも増大しました。2024年に発生したある企業の情報流出事例では、元従業員が在職中に1,306名分の顧客情報を転職先企業に持ち出していたことが明らかになりました。この事件では外部からのハッキングではなく、内部の管理体制の不備が原因でした。
このような内部不正は、一度発生すると被害は甚大です。個人情報の漏えいによる信頼失墜、規制当局からの制裁、さらには顧客からの訴訟リスクが企業を取り巻きます。
内部不正を防ぐための取り組み
内部不正を未然に防ぐためには、次のような具体的な対策が求められます。
1. 社内セキュリティポリシーの整備
社内規定で従業員のデータアクセス範囲や持ち出し可能な情報を明確にする必要があります。また、従業員が退職する際には、データの持ち出しがないかログを徹底的に確認するプロセスを設けるべきです。
2. 定期的な従業員教育
情報管理に関する教育は、全従業員を対象に定期的に行う必要があります。内部不正は意図的な場合だけでなく、知識不足による場合も多いため、セキュリティリテラシーを向上させる取り組みが重要です。
3. ログ監視とアクセス制御の徹底
データアクセスの記録を自動的にログとして保存し、異常な動きがあればすぐに検出できる体制が求められます。また、役職や部署ごとに情報へのアクセス権限を制限することで、不正行為の発生を抑制できます。
ログ監視・アクセス制御も可能なEDR -SentinelOne-
暗号化の必要性とそのメリット
情報漏えいを防ぐうえで、暗号化は不可欠な技術です。暗号化とは、情報を一定のルールに基づいて変換し、第三者が理解できない形式にすることを指します。この技術は情報が流出した場合でも、内容を保護する強力な手段となります。
1. 暗号化の仕組み
暗号化では、元のデータを暗号化キーを使用して変換し、許可された受信者のみが復号化できるようにします。これにより、データが仮に外部に流出したとしても、情報自体が解読不能であるため、悪用を防ぐことができます。
2. 暗号化を導入する利点
- 持ち出し対策
従業員がデータを持ち出しても、復号化キーを持たない限りデータを悪用することは困難です。 - 規制対応
個人情報保護法やGDPR(一般データ保護規則)においても、暗号化は推奨されるセキュリティ対策として挙げられています。 - 信頼性向上
顧客情報が暗号化されていれば、万一流出した場合でも顧客への説明責任を果たしやすく、企業の信頼維持につながります。
3. 暗号化技術の導入ポイント
企業で暗号化を導入する際には、次の点に留意する必要があります。
- 暗号化の対象データを明確にする(例: 個人情報や財務データ)。
- 業務に影響を与えない形で暗号化を実施する。
- 復号化キーの管理を厳格に行い、管理者権限を最小限に限定する。
再発防止策の実行が信頼回復の鍵
上述の企業では、情報漏えいを受けて次の再発防止策を講じると発表しました。
- 従業員退職時のデータログ調査。
- 社内の監視体制の見直し。
- セキュリティ教育の強化。
これらに加え、暗号化技術を積極的に取り入れることで、より強固なセキュリティ体制を構築することができます。企業は顧客情報を守るための取り組みを透明性を持って公開し、信頼回復に努める必要があります。
まとめ
社内の持ち出しによる内部不正は、どの企業にも起こり得る現代の課題です。しかし、適切な管理体制の構築と暗号化技術の活用により、情報漏えいリスクを大幅に軽減することができます。企業は従業員や顧客からの信頼を守るためにも、内部不正防止策とセキュリティ強化を怠らない姿勢が求められます。
セキュリティ対策はコストではなく投資です。今後もさらなる技術革新を取り入れながら、企業全体で情報管理の重要性を共有していく必要があるでしょう。