「クレジットマスター」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?これは、悪意ある第三者がクレジットカード番号の規則性を利用して他人のカード情報を不正に取得する手法を指す。
具体的には、プログラムを用いて大量のカード番号を生成し、ECサイトでその有効性を確認することで、実際に使用可能なカード情報を割り出すというものだ。
この手法は、インターネットの初期から存在し、最近再び注目を集めている。

クレジットマスターの手口

攻撃者は、まずクレジットカード番号の規則性を理解することから始める。クレジットカード番号は特定の規格に従って生成されており、その中には発行者識別番号(BIN)やチェックデジットが含まれている。このため、攻撃者はある程度の予測を立てて大量の番号を生成し、ECサイトの決済フォームに入力していく。成功した場合、そのカード情報は不正利用され、商品が購入される。

被害の実態

クレジットマスターによる被害は年々増加しており、2023年には日本国内で540.9億円もの不正利用被害が報告された。特に「番号盗用」による被害が全体の93.3%を占めており、その多くがクレジットマスターによるものであると考えられている。このような状況下で、ECサイト運営者は自らのビジネスを守るために迅速な対策が求められる。
⼀般社団法⼈⽇本クレジット協会「クレジットカード不正利⽤被害の集計結果および数値の訂正について」(2023年3⽉31⽇)よりhttps://www.j-credit.or.jp/download/news_202300000195.pdf

ECサイトへの影響

クレジットマスター攻撃は、単に金銭的な被害をもたらすだけではない。サーバーに過剰な負荷がかかり、システム障害が発生する可能性もある。これにより、顧客がサイトにアクセスできなくなり、販売機会を失うことにつながる。また、不正利用によって顧客情報が流出するリスクもあり、これが信頼低下や風評被害を引き起こすこともある。

企業側の対策

ECサイト運営者は以下のような対策を講じることが重要だ。

  1. 不審なIPアドレスからのアクセス制限
    特定のIPアドレスからの異常なアクセスを検知し、それをブロックする。
  2. EMV-3Dセキュア認証
    国際カードブランドが推奨する本人認証サービスを導入し、高リスク取引に対して追加認証を実施する。
  3. 不正検知システム
    注文内容やユーザー行動をリアルタイムで監視し、不審な取引を検出する。

消費者側の対策

消費者もまた、自らのクレジットカード情報を守るために以下の点に注意すべきだ。

  1. 利用明細の定期的な確認
    月ごとではなく、週単位や取引ごとに明細をチェックすることで、不正利用に早く気づくことができる。
  2. 利用制限サービス
    必要な範囲内でのみカード利用できるよう設定し、不正利用リスクを軽減する。
  3. 通知サービス
    カード利用時にリアルタイムで通知されるサービスを活用し、不審な取引があった際にはすぐに対応できるようにする。

クレジットマスターと社会的影響

このような不正行為は個人や企業だけでなく、社会全体にも影響を及ぼす。例えば、大規模な攻撃によって一時的にECサイトが機能しなくなると、その影響は広範囲にわたる。顧客は他社サイトへの移行を考え始め、その結果として企業間競争にも影響が出る可能性がある。

まとめ

クレジットマスターという手法は決して新しいものではないが、その脅威は依然として根強い。ECサイト運営者と消費者双方が積極的に対策を講じ、自らの情報とビジネスを守る努力が求められる。今後もこの問題への関心を高め、安全なオンライン取引環境作りに取り組むことが重要だ。