2024年9月、警察庁は企業や組織に対して重大な警告を発しました。VPN(仮想プライベートネットワーク)やリモートデスクトップを経由したランサムウェア攻撃が急増しているというのです。
警視庁公式HPより:https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/R6_Vol.7cpal.pdf

ランサムウェア攻撃の現状

攻撃の手口

最新の調査によると、ランサムウェア攻撃の81.7%がVPNやリモートデスクトップを経由して行われています。攻撃者はVPN機器の脆弱性や流出した認証情報を悪用し、企業のネットワークに侵入します。いったん侵入に成功すると、重要なデータを暗号化し、解除と引き換えに身代金を要求するのです。

被害の深刻さ

ランサムウェア攻撃の被害は単なるデータの暗号化にとどまりません。最近では、「二重恐喝(ダブルエクストーション)」と呼ばれる手法も確認されています。これは、データを暗号化するだけでなく、窃取したデータを公開すると脅迫する手法です。この脅威は、企業の機密情報や個人情報の保護に深刻な影響を与える可能性があります。

攻撃の主な原因

VPNの脆弱性

VPNは企業のネットワークセキュリティにとって重要な役割を果たしていますが、同時に攻撃者にとっての格好の標的にもなっています。多くの企業がVPNを利用してリモートワークを可能にしていますが、適切なセキュリティ対策が施されていないVPN機器は、攻撃者にとって格好の侵入口となります。

弱い認証情報

認証情報の管理不足も大きな問題です。多くの場合、簡単に推測できるパスワードや、複数のサービスで同じパスワードを使い回すことが、攻撃を容易にしています。

医療機関を狙う攻撃

特に注目すべきは、医療機関を標的としたランサムウェア攻撃の増加です。医療機関は以下の理由から、攻撃者にとって魅力的な標的となっています。

  1. 大量の個人情報を保有している
  2. 古い機器やシステムを使用している場合が多い
  3. システム停止の影響が大きく、復旧の緊急性が高い

対策と予防

技術的対策

  1. VPN機器の更新
    最新のセキュリティパッチを適用し、既知の脆弱性を解消することが重要です
  2. OSの最新化
    オペレーティングシステムを常に最新の状態に保つことで、多くの脆弱性を防ぐことができます
  3. 強力な認証
    多要素認証の導入や、複雑なパスワードの使用を義務付けることで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます

運用面での対策

  1. オフラインバックアップ
    定期的にデータのオフラインバックアップを作成することで、ランサムウェア攻撃を受けた場合でもデータの復旧が可能になります
  2. 従業員教育
    セキュリティ意識の向上と、不審なメールやリンクに対する警戒心を養うことが重要です
  3. インシデント対応計画
    攻撃を受けた際の対応手順を事前に策定し、定期的に訓練を行うことで、被害を最小限に抑えることができます

攻撃を受けた場合の対応

ランサムウェア攻撃を受けた場合、以下の手順を速やかに実行することが重要です。

  1. 感染した端末をネットワークから隔離する
  2. 端末の電源を切らず、再起動も行わない
  3. 速やかに警察に通報し、専門家の助言を求める

まとめ

ランサムウェア攻撃は、その手法を進化させ続けています。VPNやリモートデスクトップを経由した攻撃の増加は、企業のセキュリティ対策に新たな課題を突きつけています。しかし、適切な技術的対策と運用面での対策を組み合わせることで、リスクを大幅に軽減することができます。

サイバーセキュリティは、もはや IT部門だけの問題ではありません。経営層を含む組織全体で、セキュリティ意識を高め、継続的な対策を講じていくことが不可欠です。今こそ、自社のセキュリティ体制を見直し、必要な投資を行う時なのです。

ランサムウェア攻撃は、企業の存続を脅かす重大な脅威です。しかし、適切な準備と対策を講じることで、その脅威に立ち向かうことができます。サイバーセキュリティは終わりのない戦いですが、継続的な警戒と対策の更新こそが、安全なデジタル環境を維持する鍵となるのです。