インプレゾンビとは、SNSプラットフォーム「X」(旧Twitter)で広告収益を得る目的でインプレッション(閲覧回数)を増やすための迷惑投稿を行うアカウントのことを指します。これらのアカウントは、他人の投稿を無断でコピー・再投稿したり、無意味な返信を繰り返して注目を集めようとします。本記事では、インプレゾンビの特徴、影響、サイバーセキュリティへの関わり、およびその対策について詳しく説明します。

インプレゾンビの特徴

コンテンツ拝借型
既に話題になっているコメントや動画を無断で再投稿することが一般的です。

無意味な返信
文脈に関係のない返信を繰り返し、インプレッションを稼ぐために注目を集めようとします。

フェイクニュースの拡散
偽情報や誤情報を広め、混乱を引き起こすことも多いです。

インプレゾンビの影響

インプレゾンビの活動は特に災害時や重要なニュースが発生した際に顕著です。例えば、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、救助を求める実際の投稿をコピー・アンド・ペーストした偽の投稿が多く見られ、混乱を引き起こしました。また、2024年3月19日には「チャールズ国王が死亡した」というフェイクニュースが拡散され、社会的な混乱を招きました。

インプレゾンビとサイバーセキュリティ

インプレゾンビは、サイバーセキュリティの観点からも深刻な問題となっています。これらのアカウントは、単にインプレッションを稼ぐためだけでなく、より悪質なサイバー攻撃の一環としても利用される可能性があるといわれています。

フィッシング攻撃の増加
インプレゾンビは、偽のリンクを含む投稿を広めることで、フィッシング攻撃を助長する可能性があります。ユーザーがこれらのリンクをクリックすると、個人情報やログイン情報が盗まれるリスクがあります。

マルウェアの拡散
インプレゾンビが広めるリンクの中には、マルウェアを含むサイトへの誘導リンクも含まれる可能性があります。これにより、ユーザーのデバイスにマルウェアが感染し、さらなる被害が発生することが考えられます。

データの盗難
インプレゾンビは、ユーザーの個人情報を収集し、悪意のある第三者に販売することがあるかもしれません。これにより、プライバシー侵害や経済的損失が発生する可能性があります。

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セキュリティソフトの利用
信頼性の高いセキュリティソフトをインストールし、フィッシング攻撃やマルウェアからデバイスを保護します。

リンクの検証
不審なリンクや未知の送信元からのリンクはクリックしないようにし、信頼できるソースからの情報のみを信じることが重要です。

多要素認証の導入
SNSアカウントには多要素認証を導入し、不正アクセスを防止します。これにより、パスワードが漏洩してもアカウントへのアクセスを防ぐことができます。

定期的なパスワード変更
パスワードを定期的に変更し、異なるサービスで同じパスワードを使わないようにすることで、セキュリティを強化します。

インプレゾンビの出現背景

インプレゾンビが出現した背景には、いくつかの要因があります。まず、Xが2023年夏頃から導入した広告収益分配システムが挙げられます。このシステムにより、一定の条件を満たしたユーザーに広告収益が分配される仕組みが導入されました。これにより、収益を得るためにインプレッション数を増やそうとするアカウントが増加しました。具体的な収益化の条件として、過去3か月の投稿に対するインプレッションが合計500万件以上あることが設定されており、この高いハードルを達成しようとする動きがインプレゾンビの増加につながりました。

また、途上国からの参入も要因の一つです。パキスタンやインド、アフリカの国々など、新興国や途上国の若者たちがSNSでの収益化に活路を見出そうとしており、これにより国境を越えてインプレゾンビが増加しています。さらに、Xの有料プラン「X Premium」に加入したユーザーの返信が優先表示されるようになったことも、インプレゾンビの影響力を高める要因となっています。広告収益分配の仕組みが始まった直後、数万ドルもの報酬を受け取ったという人気投稿者の存在が「Xは稼げる」という認識を広げたことも、インプレゾンビ増加の一因です。

インプレゾンビへの対策

インプレゾンビの問題を解決するためには、いくつかの対策が有効です。まず、ブラウザ拡張機能の利用が挙げられます。「X-zombie-killer」などのブラウザ拡張機能を利用することで、インプレゾンビの投稿を自動的にフィルタリングすることができます。この拡張機能は、特定の言語やキーワードを非表示にするオプションも提供しており、ユーザーの閲覧体験を改善します。

また、プラットフォームの機能改善も重要です。Xはインプレゾンビ対策として「リンク付きのリプライ」をブロックする機能を開発中です。この機能は、スパムボットや他人のリプライで自分のウェブサイトなどを宣伝するユーザーをブロックすることができます。また、リプライに低評価をつける「よくないね」ボタンの開発も進められています。

▼X社のセキュリティエンジニアリング担当シニアディレクターであるクリストファー・スタンレー氏は、「私のチームが開発しています」と投稿し、この機能が開発中であることを認めました。

さらに、ユーザー自身の行動も重要です。ユーザーは迷惑なアカウントをミュートやブロックすることができます。不適切な投稿やアカウントをプラットフォームに報告し、拡散されている情報が正確かどうかを確認することで、インプレゾンビの影響を減少させることができます。

まとめ

インプレゾンビは、SNSの広告収益を狙って迷惑投稿を繰り返すアカウントであり、特に災害時や重要なニュースが発生した際に大きな影響を及ぼします。
また、サイバーセキュリティの観点からも深刻な脅威をもたらすため、ユーザーはセキュリティ対策を徹底し、プラットフォーム側も対策を強化する必要があります。これらの取り組みによって、インプレゾンビの影響を最小限に抑えることが可能となります。