APT(Advanced Persistent Threat)攻撃は、高度で持続的な脅威を意味するサイバー攻撃の一種です。標的型攻撃の一つであり、特定の個人や組織を対象に、長期間にわたって複数の攻撃手段を用いて行われます。APT攻撃の主な目的は、機密情報の窃取やデータの改ざん、ターゲットのシステムに対する妨害行為です。APT攻撃は、その高度な手法と持続的な性質から、非常に厄介であり、企業や政府機関にとって大きな脅威となっています。

APT攻撃の特徴

APT攻撃にはいくつかの特徴があります。

  • 長期間の潜伏
    APT攻撃は、ターゲットに気付かれないように長期間にわたって行われます。攻撃者は侵入後、痕跡を残さないように慎重に活動し、バックドアを設置して再侵入を容易にします。
  • 高度な手法
    APT攻撃は、カスタムマルウェアやポリモーフィック型マルウェアなど、既存のセキュリティ対策を回避するための高度な技術を使用します。
  • 多段階の攻撃
    APT攻撃は、複数の段階を経て行われます。まず、標的のシステムに侵入し、その後、内部ネットワークを拡大して情報を収集します。最終的には、機密情報の窃取やシステムの破壊を行います1

APT攻撃の手口

APT攻撃の手口は多岐にわたりますが、一般的には以下のような方法が用いられます。

  • フィッシング
    攻撃者は、標的に対してマルウェアが添付されたメールを送信し、クリックさせることでマルウェアをインストールさせます。この手法は、標的がメールの送信者を信頼している場合に特に効果的です。
  • ソーシャルエンジニアリング
    攻撃者は、ターゲットの信頼を得るために偽の身分を使い、情報を収集します。この情報を基に、さらに高度な攻撃を仕掛けます
  • ゼロデイ攻撃
    攻撃者は、まだ知られていないセキュリティの脆弱性を利用してシステムに侵入します。この手法は、従来のセキュリティ対策では検知が難しいといわれています。

APT攻撃の事例

APT攻撃の事例は数多く報告されています。以下はその一部です。

SolarWinds攻撃(2020年)

SolarWinds攻撃は、APT29(別名Cozy Bear)とされるロシア国家支援のAPTグループによって実行された大規模なサプライチェーン攻撃です。この攻撃では、SolarWinds社のOrionソフトウェアプラットフォームが侵害され、ソフトウェアアップデートにバックドアが仕込まれました。このバックドアを通じて、攻撃者は米国政府機関やFortune 500企業を含む多くの高プロファイルなターゲットのネットワークに侵入しました。この攻撃は、国家規模のサイバー攻撃の深刻さを示す典型的な例です。

SolarWindsの公式声明

Stuxnet(2010年)

Stuxnetは、イランの核施設を標的とした高度なマルウェア攻撃です。この攻撃は、シーメンスのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)を狙ったもので、核濃縮プログラムを妨害する目的で設計されました。Stuxnetは、USBデバイスを介してシステムに侵入し、特定の産業制御システムを標的にしました。この攻撃は、国家が関与していると考えられており、サイバー戦争の新たな形態を示すものとして注目されました。

Googleを襲った中国発「ゼロデイ攻撃」(2010年)

この事例は、企業の機密情報を狙うAPT(Advanced Persistent Threat)攻撃の典型的な例です。大規模な攻撃によって、GoogleのGmailアカウントやパスワードが盗まれたことが判明しました。この事件はGoogleのセキュリティの脆弱性を露呈させ、人権侵害に利用される可能性も指摘されました。

2010年1月、Googleは「オペレーション・オーロラ」と呼ばれる中国発のサイバー攻撃を受けたと発表しました。この攻撃はインターネット・エクスプローラー(IE)の脆弱性を突いたゼロデイ攻撃でした。ゼロデイ攻撃とは、脆弱性が公表される前にその欠陥を悪用する攻撃であり、防御が非常に難しいとされています。

この事件を受けて、Googleは中国の検閲政策に抗議し、中国市場からの撤退を検討するなど、大きな影響を及ぼしました。また、この事件は他の企業や政府機関にも広範な影響を与え、セキュリティ対策の重要性を再認識させるきっかけとなりました。

「Operation Aurora」に関する公式声明

APT攻撃の対策

APT攻撃から組織を守るためには、以下のような対策が必要です。

  • 多層防御
    複数のセキュリティ対策を組み合わせることで、攻撃者が一つの防御を突破しても他の防御で検知・阻止できるようにします。これには、ファイアウォール、侵入検知システム(IDS)、侵入防止システム(IPS)などが含まれます2
  • 従業員の教育
    全従業員がAPT攻撃のリスクを認識し、フィッシングメールやソーシャルエンジニアリングの手口に対する警戒心を持つことが重要です。定期的なトレーニングとシミュレーションを行い、従業員のセキュリティ意識を高めます
  • 定期的なセキュリティ監査
    システムやネットワークの脆弱性を定期的にチェックし、早期に対策を講じることで、攻撃のリスクを最小限に抑えます。また、異常な活動を検知するための監視体制を整えます
  • エンドポイント保護
    エンドポイント(PCやモバイルデバイス)に対する保護を強化し、マルウェアの侵入を防ぎます。これには、最新のアンチウイルスソフトウェアやエンドポイント検知・応答(EDR)ツールの導入が含まれます
  • データの暗号化
    機密情報を暗号化することで、万が一攻撃者がデータにアクセスしても、情報を利用できないようにします

まとめ

APT攻撃は、その高度な手法と長期間にわたる持続的な性質から、企業や政府機関にとって非常に深刻な脅威です。攻撃者は、フィッシングやソーシャルエンジニアリング、ゼロデイ攻撃などの多様な手法を駆使して、ターゲットのシステムに侵入し、機密情報を窃取します。APT攻撃から組織を守るためには、多層防御、従業員の教育、定期的なセキュリティ監査、エンドポイント保護、データの暗号化など、包括的な対策が必要です。

これらの対策を講じることで、APT攻撃のリスクを最小限に抑え、組織の情報資産を守ることができます。ー文化はサステナビリティにも貢献しています。デジタル技術を駆使した製品やサービスは、環境への負荷を軽減することができます。例えば、デジタル化されたオフィスやペーパーレス化は、資源の節約に繋がります。