標的型攻撃(Targeted Attack)は、特定の個人や組織を狙ったサイバー攻撃の一種です。一般的な無差別攻撃とは異なり、攻撃者はターゲットに関する詳細な情報を収集し、精密な攻撃を仕掛けます。このコラムでは、標的型攻撃の定義、手法、事例、そして防御策について詳しく解説します。
標的型攻撃の定義と特徴
標的型攻撃は、特定の組織や個人を狙い撃ちにするサイバー攻撃です。攻撃者はターゲットの業務内容や関係者について詳細に調査し、信頼できる送信者を装ってメールを送信するなどの手法を用います。この攻撃は、単なる情報窃取に留まらず、業務妨害やシステム破壊など多岐にわたる目的を持つことがあります。
APT(Advanced Persistent Threat)
標的型攻撃の中でも特に高度で持続的な攻撃はAPT(Advanced Persistent Threat)と呼ばれます。APTは国家や大規模な犯罪組織が関与していることが多く、長期間にわたりターゲットに対する攻撃を続けます。
標的型攻撃の手法
標的型攻撃には様々な手法がありますが、代表的なものとして以下のようなものがあります。
標的型攻撃メール
標的型攻撃メールは、攻撃者がターゲットの信頼を得るために、取引先や関係者を装って送信するメールです。メールにはマルウェアが添付されており、受信者がファイルを開くと感染が広がります。この手法は、ソーシャルエンジニアリング技術を駆使してターゲットを騙すことが特徴です。
水飲み場型攻撃
水飲み場型攻撃(Watering Hole Attack)は、ターゲットが頻繁に訪れるウェブサイトを悪用する手法です。攻撃者はそのウェブサイトにマルウェアを仕込み、ターゲットがアクセスすることで感染させます。この手法は、特定の業界や組織を狙った攻撃に効果的です。
標的型攻撃の事例
標的型攻撃は多くの企業や組織に深刻な被害をもたらしています。以下はその代表的な事例です。
早稲田大学の事例
2014年12月、早稲田大学は標的型攻撃メールにより3,308人分の個人情報が流出しました。攻撃者は医療費通知を装ったメールを送り、職員のパソコンにマルウェアを感染させました。その後、大学の管理サーバーにアクセスし、大量の情報を窃取しました。
参考:https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1506/22/news146.html
某重工業企業の事例
ある重工業企業では、標的型攻撃により83台のPCやサーバーが感染しました。攻撃者は内部ネットワークに侵入し、機密情報を盗み出しました。この事件では、攻撃者が米国のサーバーを利用して情報を送信していたことが判明しています。
参考:https://www.ipa.go.jp/security/j-csip/ug65p9000000nkvm-att/000024542.pdf
標的型攻撃の影響と被害
標的型攻撃は、企業や組織に多大な影響を及ぼします。主な被害としては以下のようなものがあります。
- 情報漏洩:機密情報や個人情報が外部に流出し、企業の信頼性が低下します。
- 経済的損失:情報漏洩やシステム障害により、企業は多大な経済的損失を被ります。
- 業務妨害:システムの破壊や改ざんにより、業務が停止し、復旧に時間とコストがかかります。
標的型攻撃の防御策
標的型攻撃から身を守るためには、以下のような対策が必要です。
技術的対策
人的対策
- 従業員教育
従業員に対してセキュリティ教育を実施し、不審なメールやリンクを開かないように指導します1。 - ペネトレーションテスト
定期的にペネトレーションテストを実施し、システムの脆弱性を評価します。
まとめ
標的型攻撃は、現代のサイバー脅威の中でも特に深刻なものです。攻撃者はターゲットに関する詳細な情報を収集し、精密な攻撃を仕掛けます。企業や組織は、技術的対策と人的対策を組み合わせて、標的型攻撃から身を守る必要があります。従業員のセキュリティ意識を高め、最新のセキュリティ技術を導入することで、標的型攻撃のリスクを最小限に抑えることができます。