ロシアは高度なサイバー攻撃能力を持つ国として知られており、その活動は国際的なセキュリティ環境に大きな影響を与えています。特に近年、ロシアによるサイバー攻撃の活発化が報告されています。

米マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、2024年パリ五輪に向けて「サイバー攻撃でロシアによる集中した活動が見られる」と警告しています。同社は3万人規模のサイバーセキュリティーチームを持ち、グローバルで攻撃の兆候を監視しています。

ロシアのサイバー攻撃は、政府機関や軍事施設だけでなく、重要インフラも標的にしています。Group-IBの報告によると、2021年7月から2022年6月にかけて、少なくとも19の国家支援型サイバー攻撃集団の活動が確認されました。これらの攻撃は、対立する国家の重要インフラやサプライチェーンを狙い、社会や経済を混乱させることを目的としています。

ロシアにおけるサイバー攻撃の事例

2007年のエストニアに対するサイバー攻撃

金融、メディア、政府のウェブサイトが大規模な分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を受けました。

2014年から2016年にかけてのウクライナ軍に対する攻撃

ロシアのAPT「Fancy Bear」がウクライナ軍のロケット部隊と砲兵隊を標的にしたAndroidマルウェアを使用しました。

2015年のウクライナの電力網に対する攻撃

ロシアのハッカーグループ「Sandworm」が関与した可能性があり、20万人以上が一時的に停電しました。

対応策

ロシアのサイバー攻撃に対する対応策として、以下のような取り組みが行われています。

  1. 防御体制の強化
    • 多くの国がサイバー防衛体制を強化しています。日本では、内閣官房に「サイバー安全保障体制整備準備室」を設置し、法整備の検討を進めています
  2. 国際協力の推進
    • サイバー犯罪対策分野における知見の共有や能力構築支援が実施されています
  3. 企業の対策強化
    • 多要素認証の義務付け、最新のセキュリティツールの導入、脆弱性へのパッチ適用、データのバックアップと暗号化、従業員教育などが推奨されています
  4. 官民連携
    • NTTセキュリティホールディングスの横浜社長は、「官民が連携し、情報を共有するなどして重要インフラを防御する活動を進めることが一番大事だ」と指摘しています
  5. 能動的サイバー防御の検討
    • 日本政府は、攻撃を未然に排除する「能動的サイバー防御」の導入を検討しています。ただし、現行法体系との整合性や財政措置などの課題があります

まとめ

ロシアのサイバー攻撃は今後も続くと予想されており、各国は防御体制のさらなる強化と国際協力の深化が求められます。特に、重要インフラを持つ企業と政府の密接な連携が重要になると考えられます。サイバーセキュリティの課題は日々進化するため、継続的な技術革新と国際的な協力が不可欠です。ロシアのサイバー戦略とこれに対する国際社会の対応は、今後も注目される重要な分野となるでしょう。